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Sumito Sakakibara Solo Exhibition
YUKI-SIS では、6月27日(月)-7月9日(土)榊原澄人個展 "The Emergence of Synchronic Recipro-Inclusive Zone -共時的相互包摂境域ノ出現(キョウジテキソウゴホウセツキョウイキノシュツゲン)-"を開催いたします。
国内では、文化庁メディア芸術祭大賞受賞作品「浮楼」、DOMANI展(2015)にて大絶賛を浴びた「É IN MOTION No.2」、そしてスパイラル30周年記念展「スペクトラム」で発表された「Solitarium」をはじめとするアニメーション映像作品で知られ、美術館やアートフェスティバル等での上映、そして海外の多数の映画祭で作品が招待上映、受賞多数。その才能が世界で注目されるアニメーション作家です。また2021年制作された「飯縄縁日-Iizuna Fair-」は、2021年長野県立美術館改装後初のこけらおとしの展覧会として発表され、常設展示として現在も上映されています。
久しぶりの個展となる今展、榊原澄人はメディア史の原初に現れた「パラパラ漫画」との邂逅から未踏の時層へと旅立つ『S.R.Z. 〜共時的相互包摂境域ノ出現』を発表します。また、同時に最新作アニメーション「飯縄縁日-Iizuna Fair-」も上映致します。
S.R.Z 手回し式パラパラ漫画 2022 Size/18.5×20.5×D13.0cm
【世界一複雑なパラパラ漫画】
個人差はありますが、一般的に人間の視覚が1秒間の間に感知できる事ができるコマ数はおよそ24コマと言われています。アニメーションは最も基本的な要素として原画(Key Frame)と動画(Inbetween)というコマの連続から成ります。この連続したコマは映像として鑑賞者の脳の中で編集され、「動き」として認知されることとなります。動きは外的に存在するのではなく、鑑賞者の中にうまれるものなのです。
榊原の作品に描かれるモチーフは、それぞれが反復運動とメタモルフォーズを繰り返しながら相互作用して一枚の共時多発・多眼的な場〈ZONE〉を作り出します。個々の要素は動的で円環的時間の中においてのみ、〈本性〉を一つとしながら〈他者〉として、時系列的概念上に〈Reci-前〉〈Pro-後〉という形で自らの本性を分つ分身(ファントム)と論理的に不可知な共存〈時間的クラインの壺〉の像–非時間的相互包摂境域を出現させます。
共時的相互包摂境域は全体と個が動的な流れの中で互いの存在を担保、補完しながらリニアな時間を頓挫させ、メタモルフォーゼの中でヒエラルキーの転覆と〈個〉〈全〉いずれの認識にも属さない在り方、事物が〈在る〉のではなく、動的な中で〈起る〉事を観る者の前に鮮やかに顕すのです。
子供の頃から誰もが知る「パラパラ漫画」。榊原の切り拓く新たなアニメーションの地平をぜひ体験してください。
【アニメーション 飯縄縁日―Iizuna Fair-】
長野県・飯綱山麓に居を構える作家本人の観る世界、Inner Landscape (内在的原風景)を北信の風景を織り交ぜながら描き出す一大縁起絵巻。各要素が全体運動の中で互いに溶け合い、時空やヒエラルキーといった概念を転覆させるカーニバル作品として新美術館の26mL字空間に常設上映されています。
【Artist Note】
言葉と沈黙のあわいで
詩はどこから生まれて 絵は何によって像を結ぶのだろうか
音楽はどこからきて Anima(生命/魂)は何に起つのだろうか
私達は普段、自らの生を生きる中で〈時間〉という非可逆的性質を持つ〈界層〉において、自らの過去、忘れたくないもの、忘れられない事、ノスタルジーや来るべき世界への期待や不安、恐怖、予感と共にいきている。こうなりたい自分、ああだったからこうなってしまった自分。それらが今の「私」を形成し、「自我」や「自己同一性」を獲得していると信じて生きている。
しかし私達は本当にそのような理知的でロジカルな因果律やクロノロジカルな時系列によって己の生を生きているのだろうか。歴史の中で自らの立ち位置を見出し、時代を背負い、記憶と展望の中にのみ生きているのだろうか。「言葉」や「意味」によってのみ生きているのだろうか。その生はあまりにも苦しく、辛い。辛いけど、そういうものを抱えて生きるより他はない。リニアな線(戦)上では。
映像、とりわけアニメーションは「生命/時間/こころ」という命題を強烈に孕んだ媒体である。
私達は現代におけるこの映像という時間を極に意識する媒体にあって、改めてこの「時間・歴史・世界・生命」そのものについて問うている。
理知的にではなく、心の働きによって。詩がうまれる<界>に想起して。
私達の生命は何に立脚しているのか。時間とはなんなのか。「こころ」はどこから生まれるのか。非時間的〈界〉の可能性と、私達の生、Anima(魂)、詩性(ポエジー)の寄り起つ〈界〉の今世紀における思わぬ邂逅は、ヒトの歴史が始まって以来受け継がれてきた「芸術」という営みの中で脈々と息づいてきた「共時(非時間)的感覚」にぼんやりと、解像度をあえて低くしながらフォーカスを当てている。
理性で去勢され、頭でっかちになった現代の私達の生が世界に対して謙虚さを取り戻し、自らの生を他に依拠しつつ自らの命を生きること。個の内在的抒情が迸る衝動に突き動かされて吐露される時、芸術はANIMA(生と死)の息吹として思想や時代、時間の層を超えて直接観る者、聴く者に言葉以前の言葉として語りかけてくる。
作品が時間を包摂した映像という媒体を通して、そのような非理知的で非時間的体験を観るものにもたらすことができればこの上ない。
榊原澄人
榊原澄人 略歴
1980年 北海道十勝生まれ
1996年 渡英
1998年 Cambaewell College of Art : Foundation Course 修了
2001年 Kingston University: Communication Design科BA課程修了
2003年 文化庁新進芸術家海外研修員(ロンドン、イギリス)
ロイヤル・テレビジョン・ソサエティー賞:学生アニメーション部門英国全国大会一位
2004年 RCA(英国王立芸術大学院):アニメーション科博士課程修了
2005年 英国アニメックス学生アニメーションフェスティバル大賞受賞
デジタルアートアワード受賞
2006年 平成17年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞
英国アカデミー賞短編アニメーション部門・ノミネート
国際漫画・アニメフェスティバルグランプリ
2008年 グループ展「The Echo」(ZAIM/横浜)
「開かれた窓」(広島市現代美術館)
2009年 Incidental Affairs (Suntory Museum/大阪)
2010年 Re:membering (Gallery Loop Seoul Korea / 韓国)
Around the world in 80 Hours (イギリス)
Liverpool Biennale(イギリス)
2013年 Restart (YUKI-SIS/東京)
Media Art Festival (東京ミッドタウン/東京)
Domani明日展(国立新美術館/東京)
2014年 個展 "É IN MOTION"(YUKI-SIS/東京)
2015年 スパイラル30周年記念事業展覧会
「スペクトラム ―いまを見つめ未来を探す」(スパイラル/東京)
2016年 個展 "RAPOLLO"(YUKI-SIS/東京)
個展 “Eternal Metamorphoses”(清須市はるひ美術館 / 愛知)
2017年 KENPOKU ART 茨城県北芸術祭
六甲ミーツアート芸術散歩2017
個展 榊原澄人展「榊原澄人の燈幻郷 -永遠の祭り‐」(旧・長野県信濃美術館主催 / 長野)
個展「記憶の羅針盤」(名古屋芸術大学アート&デザインセンター / 愛知)
2018年 個展「MYTH IN THE BACKYARD」 YUKI-SIS/東京
2021年 「飯縄縁日-Iizuna Fair-」 新美術館みんなのアートプロジェクト/ 長野県立美術館常設展示
飯縄縁日 -Iizuna Fair-
受賞歴 / Awards:
Nagano Art Museum: Video Installation exhibition/ permanent collection
T-Short Festival: Best of the best
Big Cartoon Festival 2021: Best Non-Narrative Animated Film
Happy Valley Animation Festival: Winner, Experimental Animation
XV. Istanbul International Architecture and Urban Films Festival: 1st prize, animation category
Animation festival of Roanne: Experimental Grand Prix
International animated film festival TOFUZI: Best Technique Award
Animasyros Animation Festival: TV & Commissioned jury prize award
CINETORO EXPERIMENTAL FILM FESTIVAL: Best experimental animation project