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Room 2020 73 x 101 cm 油彩、キャンバス Oil on Canvas
Solo Exhibition by Toshio Miyaoka
宮岡俊夫 個展
漂流する絵画
Drifting Paintings
YUKI-SIS では、2020年10月17日(土)より、宮岡俊夫個展「漂流する絵画」を開催いたします。
1984年島根県出雲市生まれ。2008年多摩美術大学美術研究科修了。
大阪、京都をはじめ、東京での個展のほか、北京(中国)、ボローニャ(イタリア)、シカゴ、サンフランシスコ、シアトル(アメリカ)など、多くのアートフェアに出品。2017年にはFACE展2017損保ジャパン日本興亜美術賞展にて読売新聞社賞を受賞。現在は、活動の場を島根県出雲市に移す。
Figure-The Ghost of Showa Era- 2020 131 x 97cm 油彩、キャンバス oil on Canvas
宮岡俊夫の絵画の描き方はとてもユニークです。すべてのキャンバス作品の裏には、その絵のモチーフとなった、小さな切手ほどの大きさの写真の切り抜きが貼られています。彼は、雑誌の切り抜きなどをその小さなサイズのまま見ながら描いていきますが、その時、その切り抜きは逆さまにしながらキャンバスに写し取っていきます。逆さまになった切手のようなサイズの写真からは、そこにはなにが写っているのかは詳細には見えません。つまり宮岡は、何を描くのか、対象物への一切の先入観を自分自身から排除し、ストイックにそのフォルムと色、光を描くことだけにフォーカスし作品をつくりあげていくのです。
作品は描き終わると元の正位置に戻して完成となります。
彼が絵画を描く上で試みているのは、この世のすべての風景や事象、人を彼の「描くモチーフにする」ことで、その存在を一旦「名もない、匿名制の存在」に変換し、結果的にアウトプットしてみること、といえるでしょう。この行為は、人が普段、知覚するすべてのものには、「これは○○である」というその名前や意味、存在理由、社会的にどういう立場にあるものなのか、という人間がつけた「存在」があり、私たちはそれを知っている(覚えさせられた)がゆえにそれに縛られている場合もある、ということに気付かせてくれます。
どの時代にもその時代に沿って流行った社会現象や事象、人が存在し、知らず知らずのうちに私たちには、その生きている時代にあわせた常識や価値基準がすりこまれ、すべての物事を判断しています。その常識を一度、フラットな意味のないものとして捉え、アウトプットされた宮岡の絵画は、どこか気になる違和感を生み出し、私たちはそれに気づくことでしょう。この現象は、「これは○○である」という価値基準の世界で描かれたものではないからだと思います。知っている具象なのに、抽象絵画のような感覚、ともいえるかもしれません。
普段、見る者の視点がコントロールされた絵画が多い中、鑑賞者が自身で内省しながらその絵の主題を探し作品を観る行為は、どこかゾクゾクするような感覚を覚え、自身が持つ記憶をさぐることとなるでしょう。
Landscape 2020 81 x 112cm 油彩、キャンバス Oil on Canvas
Figure 2020 91 x 66cm 2020 油彩、キャンバス Oil on Canvas
【Artist Note】
漂流する私と絵画
最近自分が生きてきた時代や世代などについて考える。僕は1984年に生まれました。物心ついた90年代以降はずっと経済不況であった気がするし、僕はバブル崩壊後の日本社会を生きてきた世代だと思う。また90年代半ば頃からは急速に携帯電話やインターネットが普及し世界を変えていった時代でもありました。
そうした時代の中でどういうわけか共同体は崩壊していき一人一人の人間が社会的に孤立するようになっていったと思う。現代のそうした故郷を失い、居場所もなく漂流する人間の存在が僕の絵画のモチーフです。
今回の個展では今まで主なモチーフとしてきた風景に加えて匿名的な人物像や天皇のイメージ(=御真影)を描いた絵画を発表します。描いたものはすべて雑誌やインターネットから見つけてきた既成のイメージです。風景も人物も天皇もここでは等価なものとして、それぞれの文脈から切り離されて並べられます。
宮岡俊夫
Landscape 2019 24 × 41cm 油彩、キャンバス Oil on Canvas
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