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YUKI-SIS では、8 月1 日(土)-15 日(土)坪山 斉個展「others」を開催いたします。
坪山 斉は1981 年宮城県生まれ。2010 年東京藝術大学大学院美術研究科油画技法材料第一研究室修了。現在は福岡県にて作家活動を行っています。
卒業後もトーキョーワンダーウォールなど、精力的に発表。2013 年にはTAGBOAT 主催の「タグボートアートフェス」にて圧倒的な実力の差でグランプリを受賞。若手作家の中でも、もっとも期待の集まる作家の一人です。
YUKI-SIS では初の個展となります。
東⽇本⼤震災から⾒えた⾃分のモチーフ
今回の個展のタイトルは「others」。
宮城県出身の坪山にとって、2011 年に起きた東日本大震災は、生々しく衝撃的な出来事であると同時に、メディアを通して見た「悲劇」に対して信じられないことに「他者感」を抱いたといいます。
東⽇本⼤震災が起きた当時僕は東京にいて、新聞の⼀⾯にあった故郷仙台のビール⼯場倒壊を写した報道写真に⽬を奪われた。そこには真っ⽩で巨⼤なビールタンクが沢⼭写っていて、そのうちのいくつかがドミノ倒しのように横たわり、撒き散らされた⼤量のビールが泡となって地⾯を⽩く埋め尽くしていた。その⽩の光景が、幼少から⾒てきた雪景⾊の原⾵景と重なったのか、ずっと⽬から離れなかった。それが津波や原発事故による甚⼤な被害以上に、なにより⾃分にとってリアルな震災の衝撃として今でも僕の中に存在し、作品のモチーフとなっている。
⼀⽅で、メディアを通して震災を⾒たときに覚えた圧倒的な他者感もまた同じくらい⼼に残っている。後になって、その感覚こそが⾃分の絵画世界の核になるものだと気付いた。(坪⼭⻫)
⼈物の無表情と「⽩」に向かう景⾊
今回の坪山の作品には、人物には表情が、そして風景には色がほとんどありません。作家自身が「白に向かう絵」と言うように、「無」の状態に被写体を近づけることによって、そこに微かに残る色や目の表情から、他人には計り知れない「他者」の想い、不安定さ、本質的な問題点が逆に浮きぼりになります。それは、色のある世界からぽっかりと魂が抜け落ちた原因を無意識のうちに探ってしまう行為へと導きます。
時間が経つにつれてその像は、まるで霞がかるかのように意識から薄れていった。それに対して震災後の⽇本社会には、時間が経つにつれて多くの問題が浮き彫りになりながらも、全体主義的な空気が⾊濃くなりつつある。
時間と⾏為の蓄積が、取り返しのつかない、押し戻すことのできない⼤きな奔流となって、我々を飲み込もうとする予感が確か
にある。(坪⼭⻫)
今回の作品にはしばしば数字のタイトルが登場します。この数字は、あの震災からその作品が描き終わるまでの日数。
一見、日本は何事もなかったように平和を装って日常を過ごしています。
しかし、長い歴史の中でこの絵に色があった景色から、わずかこの数字の日数しか経っていません。まだまだ考えること、やらなければならない事、無関心に忘れかけていたあの衝撃。
坪山の美しい白い絵は静かに問いかけます。