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Group Exhibition by Various Artists
Still Life ―静物― 展
YUKI-SIS では、2019年3月30日(土)-4月13日(土)5名の作家によるグループ展、Still Life ―静物―を開催いたします。
宮脇周作 3つのりんご 2017 F4 (33.0×24.0 cm) 油彩 キャンバス
みなさんご存知の通り、静物を英語で「スティル・ライフ」といいます。
この世で見つかった最古の静物画は古代ローマ時代のポンペイ遺跡とのことですが、16~17世紀のヨーロッパ,特にフランドル地方で全盛期を迎えます。その種類も花、果物、ヴァニタス、朝食画・晩餐画、台所画、狩猟画と多様ですが、作品からは当時の人々の憧れ、生活、死や老いに対する思想など、さまざまな事が推測できます。
清家正信 2019 写真/プラチナプリント
その時代は絵画の場合、現在のように写真をみながらの制作ではなく、実際に目で被写体を見ながら描いていたと思われます。果物や花などの生命の姿が変わっていく過程を毎日制作することで、観察し続ける作家の胸のうちはどのようなものでしょうか?
湯浅克俊 Death of Love #1 2014 65.5X50.5 cm 水性、油性木版
斉藤友美恵 Hazy Pink – Bowl 2018 16.4x9.0 cm 陶磁器
机上または地面におかれた静物は、ひとつの舞台のように、作者の手で設置され、作品として残されていきます。それはまるで望遠鏡から覗く世界のように切り取られた作者のまなざしです。
また、同じモチーフでも作者の見方や考え方、光の具合が変わると画面にも変化、差異が生じます。同じ形のモチーフを描いても色使いやムードも異なった絵になります。
作家たちにとって「静物」は、自分の内面を含めたあらたな気づきをひきおこさせる、とてもいいテーマだと言えます。
宮岡俊夫 Shoes 2019 F3(27.3×22.0 cm)油彩,キャンバス
YUKI-SISでは、この「静物」と作者の間にある関係性をテーマに、異なる技法の作家のグループ展を開催致します。
写真、油彩、版画、陶など、制作過程も時間も異なる技法の作家が見つめる「静物」―俯瞰とミクロの空間いったりきたりしながら写しとられた世界を味わえたらと思っています。
作家紹介
清家正信 Masanobu Seike (写真 Photography, platinum print)
1949年山口県生まれ。東京写真大学短期大学部卒。
1976年からフリーカメラマンとしてコマーシャルを中心に活動。映画の撮影にも携わる。
ライフワークとして花、風景、そして女性のポートレート写真を撮り続けている。花はいつの時代でも女性の姿に例えられるように、「美」の象徴として愛でられてきた。美しさと可憐さ、生命のダイナミズムとともに内に秘めた心をも写し取る清家の写真は、観る人の既視感を誘い、忘れていた遠い記憶や時をも引き出すようだ。
非常に細かなグレートーンをだせる古典印画技法の「プラチナプリント」を用い、一枚の写真の中に時間の深みを封じ込めた作品には、どこかしっとりした、湿度ある空気感を生み出している。
湯浅克俊 Katsutoshi Yuasa (木版 Woodcut Print)
1978年東京生まれ。武蔵野美術大学油絵学科版画専攻卒業後、渡英。2005年ロイヤルカレッジオブアート(ロンドン)修士課程修了。日本をはじめイギリス、ドイツなどを中心に個展多数。世界中のアートフェア、ワークショップ、アーティストインレジデンスなどに参加。
木版作品のモチーフには、自らが撮影した写真、またはインターネットなどからの画像を用いている。長時間の手作業の制作過程で、作家の思想や解釈が加わり、自らの手でバレンを使って摺り上げた時初めてその姿を現します。日本の伝統技術と、デジタル技術とが融合した湯浅の作品は、歴史と現代との時間軸を考慮しつつ、木版の新たな可能性を追求する姿勢が宿っている。
今回出品するDeath of Love#1は、1600年代に実際に描かれたフランドル絵画作品を元に木版にしあげた作品。静物画がフランドル絵画として全盛期だったころ、日本では浮世絵が盛んであった。その時代ヨーロッパでは人の死を、骸骨を描く事でその儚さ、空虚さ、ヴァニタスを表現したが、その一方で日本の浮世絵では死んだ人をまるで生きているかのようにいきいきと描いたという。同じ時代に描かれたものを同じ時代の日本の技法で表現することで、その思考の違いをみつめる作品。
斉藤友美恵 Yumie Saito(陶磁器 Ceramic)
1976年千葉県生まれ。文化学院陶磁科卒業。ギャラリー勤務を経た後、陶芸家として独立。新宿伊勢丹、ギャラリーでの個展、グループ展、インスタレーションなど多数。
真白で卵の殻のような磁器や、真っ黒な陶土を使った香炉や骨壷など、斉藤友美恵の手から生まれる陶作品は、神聖でどこか謎めいた雰囲気を纏っている。その完璧な造形美と、彼女の自由な発想と観察眼から生み出される新しい陶作品は、見る人を試すような緊張感と繊細さ、そしてパンキッシュな味わいをも醸し出している。
宮脇周作 Syusaku Miyawaki(油彩 Oil on canvas)
1980年福岡県生まれ。2003年、成安造形大学造形学部デザイン科イラストレーション群イラストレーションクラス卒業後、京都を中心に個展等で活動。2008年より東京に活動の場を移し、日本テレビ専属の法廷画家として活動しながら、個展を開催。
宮脇の描く静物画は写真を使用しての描写ではなく、実際の果物等を毎日見つめながらの制作となる。タッチが消えモチーフの実在感が出てくるまで描き進めるその姿勢は、同じモチーフを反復し、ヴァリエーションさせ描く事が多いという。それば、繰り返し同じ作品を作っている訳ではなく、彼自身の状態や視点の違いにより、仕上がる作品が持つムードが変わっていくことを感じることが重要なテーマだと考え、これまで絵に向き合ってきたという。子供の頃ただ美味しく食べていたりんごと、アトリエで見ているりんごでは全く異なった見え方をすることーものを実際に見て感じ、描くことに真摯に向き合った作品。
宮岡俊夫 Toshio Miyaoka (油彩 Oil on canvas)
1984年島根県出雲市生まれ。2008年多摩美術大学美術研究科修了後、活動の場を京都に移す。京都をはじめ、東京での展示のほか、北京(中国)、ボローニャ(イタリア)、シカゴ(アメリカ)、など、多くのアートフェアに出品。2017年にはFACE展2017損保ジャパン日本興亜美術賞展にて読売新聞社賞を受賞。
宮岡の描く絵画の描き方はとてもユニークで、被写体を小さな写真の切り取りにし、さかさまにして見ながら描いていく。対象物への一切の先入観を自分自身から排除し、ストイックに構図と色、光を描くことだけにフォーカスした作品は、描き終わると元の位置に戻して完成となる。
普段、見る者の視点をコントロールされた絵画が多い中、鑑賞者が自身で中心になる絵の主題を探しながら観る彼の作品は、どこか違和感とゾクゾクするような体感を覚える。観れば観るほど、観る人自身のものになっていくような錯覚を覚える作品。