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VIDEO Solo Exhibition by Fumiko Kikuchi
菊池史子 個展 “TELLING A STORY” 映像作品展示
YUKI-SIS では、2019年2月16日(土)-3月2日(土)菊池史子個展 [TELLING A STORY] を開催いたします。
"Glück auf/ Good luck"
26分7秒 3チャンネルビデオインスタレーション HD、カラー、サウンド 2018年
菊池史子は1986年生まれ。2009年日本大学藝術学部(芸術学科絵画コース/版画)を卒業後、渡独。
ブラウンシュヴァイク美術大学Candice Breitz師事修士課程修了。
現在もドイツ・ブラウンシュバイクで作家活動を行っています。
日本在住時は“記憶”や“関係性”,”時間“をテーマに、自身で撮りためた写真を厳選し、モノタイプという版画方法で作品を発表してきました。ドイツに渡ってからは、映像作品を手がけるようになり、近年ではヴィリ・ミュンツエンベルク・フォーラム・ベルリンという、権威ある映像のコンペティションで"Glück auf/ Good luck"という作品でエロバート映画賞を受賞しています (Willi Münzenberg Forum Berlin : Erobert Film Prize)。
現在、数年に渡って北海道・夕張市にて「夕張にかつてあった28校の小学校の校歌」をテーマ取材を実施しながら映像作品を制作。夕張市の情勢とともに統廃合を繰り返してきた小学校の多くは、その時代の変化が校歌の歌詞に影響を与えています。校歌を読むことで浮かび上がってくる当時の様子に焦点を当て、その校歌とともに育った卒業生へのインタビューを行なっています。その菊池の活動に北海道新聞やテレビなどの取材が集中。2017年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭ではサテライト上映されるなど、社会的な時代背景を探る彼女の活動に関心が集まっています。
今回の個展のタイトルは「TELLING A STORY」。ドイツで受賞した"Glück auf/ Good luck"、そしてアニメーションも手がけた”I know where you are right now."の2作品の映像とともに、作品のドローイングとストーリーボードを発表いたします。2作品ともに、今は亡き祖父の記憶とともに語られるドキュメンタリー作品で、時間軸は違えどもすべてが繋がっていきながら続いていくことを物語っています。
2016年に他界した菊池史子の祖父が、炭鉱夫だったこともあり、炭鉱夫という存在に親しみを感じる作家が、 1950年代に日本からドイツへGastarbeiter(ガストアルバイター)としてルール工業地帯に派遣された炭鉱夫をテーマに制作した作品。この作品でWilli Münzenberg Forum Berlin / Erobert Film Prizeを受賞。
日本に戻った元炭鉱夫と、かたやドイツに残った元炭鉱夫の方にインタビューを行い、自分の記憶と状況を混ぜ合わせたドキュメンタリー。避難民や外国人労働者が外国でその後どのような時間を過ごしていくのかというテーマでもあり、ドイツで暮らす彼女自身が、今後ドイツに住むのか、日本に住むのかの選択を迫られる現状と重ね合わせ、自分のアイデンティティーはどのように作られていくのかを問う。外国人労働者の受けいれが問題になっている日本の現状を映し出しているともいえる作品。
”I know where you are right now."
ストップモーションアニメーション 6分28秒 1チャンネルビデオインスタレーションHD、カラー、サウンド 2018年
過去、現在、未来が同時に存在する時間軸の中に死というものが存在し、その死は同時に時間を止めているのではないかということを、祖父の死と繋ぎ合わせたアニメーション作品。
アルツハイマー病を患ってから、孫である作家以外の家族の名前を忘れてしまった祖父が、突然天国の話をし始め止まらなくなる。2014年に実際に録音した、作家の祖父の声のナレーションを背景に、彼の語る天国の景色をストップモーションアニメーションで繋いだもの。アニメーションだが、ドキュメンタリー映像のような出来上がりになっている。
【Artist Note】
私の祖父は亡くなる2年前からとにかく自分の未来を語っていた。その未来とは”死後”であり彼の言うところの”天国”のことなのだけれど、私には”天国”が何なのかはよくわからない。ともあれ、近い未来を充分に想像するできれば、(たとえそれが”死”であったとしても) 不安が少し安らぐのだろうと思う。祖父が亡くなったとき、私にははっきりと彼がどこへ行ったのか想像することができた。それは誰もいない家の食卓テーブルに置かれた「ちょっとそこまで行ってくる。」と書かれた書き置きをみつけて、あ、そこか。とぼんやりと想像できる距離に近かった。
彼が亡くなった2016年以降は、彼の歴史を掘り起こすように制作をしたように思う。直接話は聞けないものの、炭鉱や外国人労働者に関しての膨大な資料やインタビューを通して生前の若かりし頃の祖父を、または自分自身の今をすかして見ているようだった。全くの古いものが過去しか映さない鏡だとしても、光の位置や反射する方向によってはそれが現在や未来を暗示することがある。そんなふうに過去と未来は現在の時間軸の中で交差しているのではないかと思うようになった。
今回展示する“ I know where you are right now.“ と“Glück auf/ Good luck“は全く異なる内容と手法で制作された映像作品ではあるが、どちらの作品も根底に時間軸の捻れや交差が生じている部分で共通している。
そしてその時間軸の真ん中には私の祖父が鎮座している。
私はその鎮座している祖父の周りを時計回りに、あるいは時計と反対回りにぐるぐると回りながら制作した。
2019年 冬 菊池史子
映像トレーラー
Trailer “Glück auf”
菊池史子 略歴
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