Exhibitions
#

 

 

湯浅克俊 個展 明日への不安と不安定な世界の中で月の美しさに気付く

Solo Exhibition by Katsutoshi Yuasa

湯浅克俊 個展

明日への不安と不安定な世界の中で月の美しさに気付く

“Speculative despair ”

 

会  期

2020年6月13日(土)~7月4日(土)
12:00~19:00

日、月 休廊 Sunday, Monday Close

展覧会会期は、今後の新型コロナウィルス感染の状況により、余儀なく変更となることもあります。

 


 

 

 

YUKI-SIS では、2020613日(土)より、湯浅克俊個展「明日への不安と不安定な世界の中で月の美しさに気付く」を開催いたします。

 

1978年生まれの湯浅克俊は、武蔵野美術大学油絵学科版画専攻卒業後、渡英。2005年ロイヤルカレッジオブアート(ロンドン)修士課程終了。日本のみならず、イギリス、ドイツ、中国など数々の個展を開催、世界のアートフェアなどにも出品。

近年では、名古屋市美術館、横浜美術館で開催された「モネ それからの100年」展に出品し、多くの観客に彼の卓越された作品を印象づけました。

日本の伝統芸術の一つともいえる木版画、写真とデジタル技術とが融合した湯浅の作品は、版画における現代美術としてのポジションをあらたに作ったと言えるでしょう。

 

The Celtic Twilight Edition 5

The Celtic Twilight Edition 5 2020  

165 x 122 cm  

油性木版画 Oil-based woodcut in Paper

 

 

2020年、新型コロナウィルス(COVID-19)が世界に蔓延したことにより、影響を受けなかった人はいないかもしれません。忙しい都会生活をしてきた人のほうが逆に、原点に立ちかえり、多くのことに気付かされる機会を得たように思います。

今年4月初旬、緊急事態宣言が出される直前に、本個展の打ち合わせのため彼のアトリエを訪問しました。木版作家である湯浅克俊の日々の生活は、「以前とそう変わらない」と彼は話します。ただ思考し、木に向かって彫り、イメージを定着していく。世界が、社会が、どうなろうとも、変わらず制作に向かう彼の本質は、震災がきてもなお咲き続ける花や自然の姿と本質的に同じだと感じました。アーティストという生き物が、圧倒的に人と異なるのは、事象を見る目、感じる力だと常々思ってきました。湯浅のような長い制作プロセスを必要とする作家は特に、すべてが手作業によるものであり、「時間をかけて事象を見る、反芻しその存在を考えること」を基本スタイルに11点の作品が制作されていきます。目に映る、変わりゆく表面上の事象だけで感じるのではなく、目に見えないこと、すべてが繋がっている事を客観的にとらえ、それを作品として表現していくこと。生きる時代が変われば、環境やその時代の常識により感じ方は変わるかもしれませんが、いつの世もアーティストは自分が感受した思想を普遍的な美とマッチさせ、作品として未来に残していく、この世でかけがえのない仕事を担っていると言えます。

 

 

Common

Common  2019 

91 x 162 cm 

油性木版画 Oil-based woodcut on paper 21組 A set of 2 sheets  Edition 3 

 

Heat Island

Heat Island 2020

61 x 91cm 

水性木版画  Water based woodcut on paper Edition.5

 


 

Artist Note

 

湯浅克俊 個展 @YUKI-SIS

明日への不安と不安定な世界の中で月の美しさに気付く

 

Solo exhibition by Katsutoshi Yuasa at YUKI-SIS

Speculative despair

 

新型コロナウィルス は私たちの生活を大きく変えました。見えない脅威に対して私たちは完全な解決策は見出せないまま今までとは異なる日常に戻ろうとしています。日本の状況は見た目には感染拡大が抑えられ、注意深く生活、活動すればどうにかやっていけるのではないかと多くの人が思っています。しかし完全に収束したわけではなく、亡くなられる方は今もいます。世界に目を向ければ感染拡大は様々な国へと広がり続けています。いまだ海外への渡航は難しく、私も海外での展覧会が延期になったり、プロジェクトが中止になったり、アートフェアがオンラインで行われたりと様々な影響を受けました。

 

しかし、私の私生活は大きくは変わりませんでした。普段から家の一部をアトリエとして使用し、そこで作品制作をしているので電車や車で通勤する必要はありません。もちろん講師を務める木版画教室が途中で休止になったり、授業を担当する大学が全く始まらなかったりと影響はありましたが他の業種の方に比べればマシな方だったように思います。多くの時間を制作だけに集中できたので、たくさんの新しい作品を生み出すことができたことは今回の件の肯定的側面と言えます。

 

どのような状況でも何かを作りたいという創作欲は人間にはあると思っています。しかし、アートが私たちの社会で存在できるのは平時の時だけなのだと改めて突きつけられました。多くの美術館は緊急事態宣言下で密集・密接を避けるため休館し、再開できたとしても今までとは異なる対応と設備が求められています。私たちがアートを鑑賞できるのは平和で安全な環境下だけなのです。

 

一方で何かを美しいと感じる感受性はどのような環境でも持つことができます。この感性こそが人間が人間たりえる大切な能力なのではないでしょうか。私たちが今回のウィルスや見えない脅威に対する漠然な不安と見えない出口。明日の糧も危うい不安定な国と未来。過剰な憶測は幻想となり、観念的な絶望を生み出します。夜空を見上げ月の美しさに気付くこと、土手から見る夕焼けにふと足を止めること。日常のほんの些細なことに美しいと感じることが出来れば、私はその絶望を心の奥に押し戻すことができると思っています。世界は常に不安定で不安は常に付き纏います。それでも私はこの世界に絶望せず諦めずに作り続けます。

 

湯浅 克俊

 

Tokyo2100

Tokyo2100  2020

45x 30cm 

水性木版画 Water based woodcut on paper Edition.5

 


 

 

展覧会会場は、換気に気を付け、窓を開けております。

ウィルス感染防止のため展覧会にご入場の際は、マスクの着用と手指消毒をお願い申し上げます。

 

ご無理のないよう、お越しくださいませ。

皆様に再びお会いできる日を楽しみにしております。