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新藤杏子

私の作品に描かれている像は、性別、年齢というものはありません。

また特定の誰かということもありません。


その像を思考の集合体のアイコンだと考えています。


現代の社会の人間はあらゆるメディア、情報ツールによって自己のアイデンティティを確認したり、考え方を実態化させて個を形成していることが多くなっているのではないでしょうか。 それは現実に生きている本当の情報、例えば、性別、年齢、実際に存在しているということなどに関しての不在を予感し、その意味や必要性が薄れているのが要因なのではないかと思います。 そして、実在している事よりも、情報そのものが個性を持ち、思考を生み始めているようにも思います。


そのことから、実体のない思考そのものが自己を作り上げているものなのではないかと考えました。


しかし、本当の情報の不在の予感や意味の消失とは対照的に、私自身が現実に体験した出来事と、私自身が現実に存在し、目の当たりにした"今"という現実があります。 ですが、その2つは常に同一平面上の中で交差しているのではないか。そして、その交差が現実の矛盾や、実体のないもへの畏怖をはらんでいるようにも感じます。


その2つの交差する瞬間を、私たちが体験したことや営みをアイコンである人体がに置きかわることで、矛盾や畏怖、アイロニーをかいま見せる事が出来ればと思っています。